Adecco Special Interview 勝地 涼 30歳で見えてきた、仕事に対する柔軟性と『楽しんで動(DO)!』のスタンス。

2016.10.11

「共同作業の意識」と「ポジティブ思考」が働きやすい環境を作る

俳優を始めたころはまだ中学生だったので“仕事”という認識は薄かったのですが、高校卒業と同時に「この道でやっていこう」と決めたことで、仕事に対する考えも変わりました。ただ当時は、ひとつの作品を作り上げるためには自分の中の思いをはっきり言ったほうがいいと思っていて、とにかく真剣に意見をぶつけ合うようにしていたんですよね。でも、30歳を迎えて最近思うのは、人と仕事をするうえで、ただがむしゃらに伝えるだけじゃいけないということです。仕事に対する熱意は昔と変わらないですが、それを違う形で消化して、「一緒にモノづくりをしていく」という思いも大切にするようになりました。やっぱり意見の食い違いでぎくしゃくした現場より、明るく楽しい雰囲気でいろんな意見を出し合えるほうがいいじゃないですか。

僕自身は明るい性格で何事も楽しむスタンスなのですが、仕事って楽しめない瞬間もたくさんあるし、特にこの仕事は、毎回、関わる人が変わっていくので、常に前向きな思考を持つことも意識しています。例えばちょっと苦手と感じる人でも、「この人はこういう考えなんだな」ってポジティブに捉えて、過敏に反応しないようにしています。

イメージをリセットすることで柔軟性が生まれ、仕事を楽しむ余裕が持てる

様々な役を演じてきた中で、“決めつけない”ことも大切だと気付かされました。自分の中でイメージを固めてしまうと、相手役の人が全然違う球を投げてきたときに動けないと感じて。それってカッコ悪いなって。それに、現場ごとに監督が変わるので、「これがいい」と言われることも毎回違う。だから、まずは一語一句、間違えずセリフを覚えるくらい台本をしっかり読み込んで、いくつものパターンをシミュレーションしながらまた読み直して、撮影に向かうようにしています。

そうやって下準備をしっかりしたうえで、現場に行ったら全部をゼロにするんです。そうすることで、どんな球に対しても柔軟に動けるようになるんじゃないかと思うんです。監督も、相手役の人も、みんないっぱい考えて来ているわけですから、自分が想像していないトーンで返ってきてもちゃんと反応したいし、僕としては押し出していきたいと思ったセリフでも、その前が面白ければつなぎのセリフに変えていけるような、そんな柔軟性を持った役者でいたいです。とはいえ、実際はなかなかできていないので“理想”なんですけど(笑)。

結局、そこは、相手の芝居がどう出てくるかを楽しめる余裕を持てるかどうかなんですよね。20代前半はそういう余裕を持てないときも多くて、今思えば真剣に向き合っていたつもりでもまだまだ甘かったなと思います。

いくつになっても仕事のスタンスに「完成形」はない

年齢を重ねるにつれて仕事に対するスタンスは変わってきましたが、いくつになっても完成形ではないんですよね、きっと。それは仕事でご一緒させていただいた先輩方を見ていて感じたのですが、自分の親より年上だったり、半世紀くらい年が離れていたりして完成されているように見える役者さんでも、現場で悩んでディスカッションして、僕にも意見を求めてきたりします。でもその姿に、「これだよな」って思いました。日々、出会う先輩たちのおかげで考えが構築されていると感じています。

後輩に対しては、30歳くらいになれば「勝地さん、悩みがあるんですけど…」と相談されることを想像していましたが、一向にないです(笑)。自然と人が集まって、説教臭くなく上手くアドバイスできる俳優仲間を見ていて、気付かされました。でも、先日、後輩が舞台のことで相談に来てくれたんです!少しは真意をくんだことを言えるかと思ったら、実際は「わかるわぁ〜」くらいしか言えなくて、僕を慕ってくれる後輩ができるのはまだまだ先だと感じました(笑)。

誰しも悩みを抱えていることを知れば、不安は和らぐ

いろんな人との出会いや経験の積み重ねがあったからこそ、今も仕事を続けられているのだと思います。だから新しい仕事がスタートするときには、今度は終わったときに何が見えているのかなっていう期待があります。今回「レンタル救世主」というドラマで、「紀伊ロイ」というコミカルな役どころを演じています。電話一本で何でも引き受けるっていう、現実にはあり得ない内容をコメディタッチに描いている作品ですが、根底には「苦しいときは『助けて』って言ってもいいんだよ」というテーマが流れているので、ポップに演じながらもうまく伝えていくにはどうしたらいいかを考えて取り組んでいます。紀伊ロイ自身も、目的意識を持てずに仕事をしている面があるので、仕事にやりがいを見出せなかったり、やりたいことが見つけられなかったりする人にも自分と重ねて見ていただけるんじゃないかと。

それでもやっぱり、新しい役を演じるときは不安のほうが大きいです。そんな不安を克服するのは、ノミニケ―ションですかね(笑)。僕の周りは同業以外でも頑張っている人ばかりなので、飲みながらあれこれ話をして悩みを聞いていると、不安なのは自分だけじゃないと思えてパワーをもらえるんです。最終的には自分次第だと思えて「飛び込むしかない!」という気持ちになれます。

“やらずの後悔”より、“やって後悔”するほうがいい

新しいことに挑戦するときは、正直、かなりおじけづきますし、怖くもありますが、30歳を迎えて「20代はもう戻ってこないんだ」って感じたときに、動いていたほうがいいと思いました。性格上、その場にとどまっているのが嫌いということもあるのですが、前に進むか、横に動くか、とにかく決めて行動しないと時間はすぐに過ぎてしまう。過去にはいきなり大抜擢される経験もしてきたので、「自分には度胸がある」って、気持ちを奮い立たせて、あとはいい意味でバカになって、楽しみながらとにかく動く。「楽しんで“動(DO)”!」です。…でも本当は緊張すると前日は眠れない事もいまだにあるんですけど(笑)。

ただ、40歳になったときに「30代でやっておけばよかった」って後悔したくはないので、たとえ大失敗したとしても、新しいことや今しかできないことを企画して、実際に挑戦していくようにしています。

PROFILE

かつぢりょう・1986年東京都生まれ。2000年ドラマ「千晶、もう一度笑って」で俳優デビュー。その後、数々の映画、ドラマ、舞台等で活躍し、2005年に映画『亡国のイージス』で「第29回日本アカデミー賞」新人賞、2016年には「夕張国際ファンタスティック映画祭2016」でニューウェーブアワードを受賞。2006年にはアニメの声優、2014年には歌手活動も開始するなど活躍の場を広げ、マルチな才能を惜しみなく発揮している。2016年10月スタートのドラマ「レンタル救世主」(日本テレビ系列)にて紀伊ロイ役を熱演。


「レンタル救世主」

沢村一樹扮(ふん)する“雇われ救世主”たちが、雑用から命に関わるような案件まで依頼人のさまざまな悩みを通して、悪をくじいていく痛快コメディ。
お人よしの中年男性・明辺悠五(沢村一樹)は、ふとしたことから莫大な借金を背負ってしまったうえ、誤解されて会社もクビに。金策に奔走する中で「レンタル救世主」というサービス会社に登録することとなる。しかしそこは、救世主とは名ばかりの、欠落を抱えた人間の集まりだった。個性豊かな“レンタル救世主”たちは、それぞれの持ち味を生かして依頼人のさまざまな「助け」に応えていく中で、本物の救世主となっていくのか!?

日本テレビ系 2016年10月9日より毎週日曜 夜10:30〜11:25(初回30分拡大)