Adecco Special Interview 佐藤 隆太 年齢や経験を重ねていくからこそ、分かる楽しさがある。

2015.6.30

仕事は大変だからこそ、悩んだ分だけ結果に結びつく

俳優になることは小さなころからの夢だったので、仕事を始めてすぐは、実際にドラマ作りに携わっていることが嬉しくて、つらいと思うことがなかったんです。楽しい気持ちが上回っていました。でもそれは、仕事の大変さや難しさを理解していなかっただけ。だから、突き進めば突き進むほど、仕事は大変なものなんだということを実感するようになっていきました。

今も仕事は楽しいけれど、当時の楽しさとは全く違います。昔は俳優という仕事をしていること自体が楽しかったけれど、今は演じているときは、時としてしんどくて、つらい。でも、そこを乗り越えるからこそ、やり遂げたときの達成感が楽しくなってくる。「一歩前へ進めたな」って実感できることが、たまらなく楽しいんです。

ただ、僕たちの仕事はその場で手ごたえを感じにくいから、作品が皆さんの目にどう映ったのか不安になることもあります。そんなときに街中で声をかけられて、「いっぱい笑いました」とか、「勇気づけられました」とか言ってもらえると、すごく嬉しくなります。そうやって振り返ってみると、悩んだ作品ほど評価が得られたり、苦しんだ分だけ、ちゃんと結果が返ってきているように感じます。

妻からも、似たようなことをよく言われるんですよ。舞台の場合はライブなので、ドラマなどの撮影よりも緊張感があり、幕開け前は、少し神経質になったりします。でも、僕が不安なときほど、「私は安心している」って妻は言うんです。「悩んでいるときのほうが、面白い芝居をしているから」って。もちろん、これは僕を安心させようという妻の優しさなんですけど、作品の中でも、自分で「今日はしっくりきたな」と思っているときに演出家からダメ出しされたかと思えば、つかみどころがなかったと落ち込んだときに「今日はよかったよ」と言われることもあります。演技が上手いとか下手とかの問題とは別に、たくさん悩みながら芝居に向き合ったときのほうが、その分、相手に伝わるものがあるのかもしれませんね。

経験することで初めて分かる、先輩の偉大さ

初めて主演をやらせていただいたときは、どこか“座長”というポジションに気負いすぎてしまったことで、苦い思いをしました。今思えば、主演ということを意識し過ぎず、自分がやるべきことだけに集中していればよかったと反省しているのですが、そのときは「自分が引っ張っていかなきゃいけない」という気持ちが抜けきれずに、力が入りすぎてしまったんでしょうね。もっと共演者やスタッフの皆さんに委ねられる部分がありましたし、僕が余計なことまで考え過ぎていたのではと思います。だから、次に主演をやらせていただける機会があったときには、肩の力を抜いて、自分らしく現場に向かいたいと思っています。

その経験から学べたことは、ほかにもたくさんありました。たとえば、それまでの現場では座長としてまとめてくれる先輩がいて、自然とみんなを引っ張ってくれていたから、そのときの先輩方が背負っているものの重みを理解しきれていませんでした。

でも、実際に自分がその立場になったことで、先輩方が先頭に立つという覚悟を持って、責任を背負い、みんなを引っ張ってくれていたことがわかりました。改めて先輩方の偉大さを実感しましたね。子供が生まれて、親のありがたみが分かる感覚に近いかな。それと同時に、今まで自分が経験していないようなときにこそ、相手の立場を思いやる想像力が必要なんだとも思いました。

自分が「先輩」と呼ばれる立場になってみて思うこと

19歳からこの仕事を始めたので、現場でも役柄でも、いつも先輩の背中を追いかける立場でした。それが、年齢を重ね、いつの間にか自分が先輩になっていて、はじめは「責任を背負わなければいけない年になったんだな」と思っていました。でも、主演で学んだことや、これまで見てきた先輩方の姿から、あまり「先輩」という立場を意識しないようにしています。後輩から相談されても「教える」という感覚は持たず、自分のやっていることを伝えるくらい。もちろん、聞かれたらちゃんと答えられるように自分なりのポリシーや考え方は持っていたいけれど、それを自分から発信したり押し付けたりするのではなく、意見の違いをディスカッションして、お互いが歩み寄ったり一つの方向に意見をまとめながら、みんなで一緒に作品を作り上げていくほうが好きですね。

ただ、現場で緊張している人がいたら、積極的に話しかけるようにはしています。あとは…、僕はあまり自分からは食事などに誘わない。誰だって先輩に誘われると断りにくいじゃないですか。だから、気を使ってしまって誘えないんです(笑)。

でも、先輩に付き合うことで、いい人間関係が生まれ、結果として仕事にプラスになることもある。だから、最近はあまり考え過ぎずに「誘ってみようかな?」と思い始めています。その分、誘ったからには、「来てよかった!」と思ってもらえるように、とことん楽しませて、後輩のためになるような雰囲気を作ってあげることが、先輩としての役目なのかもしれませんね。

プロフェッショナルとして仕事に向き合うということ

いただける仕事でも、役の立場の変化を感じるようになりました。今回、7月からスタートする「HEAT」というドラマで消防士の役をやるのですが、僕が演じる合田篤志は中隊長で、現場の指揮を執る立場なんです。今まで何度かチームで働く役を演じたことはありますが、年齢的にも後輩の立場が多かったので、このお話をいただいたときは驚きと同時に、「そうか。僕もこういう年齢になったんだな」って、新鮮味を感じましたね。合田を慕ってくれる後輩のキャラクターもいるわけですから、今までとはまた違う、新しい気持ちで撮影に臨んでいます。

とはいえ、どんな役であっても、そのキャラクターをどう演じるか、どれだけ理解できるかということが一番重要なので、ひたすら脚本を読んで、合田という役に向き合うことが最優先だと思っています。

合田は仕事に対してすごくストイックな面を持っていて、消防士という仕事のプロ意識も高い男です。だから、後輩や地元の消防団と関わっていく中で、自然とみんなを引っ張る立場になっていく。意識的に「自分が引っ張ろう」というのではなく、プロとして仕事に向き合った結果、みんなを引っ張っていける存在になっているあたりは、僕自身も演じながら学んでいきたいところですね。プロとしての誇りをもって働いている人や、皆を引っ張っていく立場にある人、チームワークの必要な仕事をしている人などにも、それぞれの目線で、合田から与えられる刺激があるんじゃないかと思います。

人と人の関わりを大切に

このドラマの中では、素性を隠して地元の消防団に入り込むタツヤと何度も衝突します。合田は、消防団としてありえない発言を繰り返すタツヤに間違っていることを教えているだけなのですが、演じながら、伝え方って大切なんだと感じましたね。

僕自身、「こうだ」と思い込んでしまうような、ちょっと頑固なところがあるんです。それは、役者という仕事柄、迷いのある演技をしないためには必要なことですし、自分なりの芯は持っていたいとも思うのですが、めまぐるしく進んでいくドラマの現場などでの会話で、伝え方が不十分になったり余裕がなくて感情的な言い方をしてしまうときもあります。そういうときは、たとえ客観的に見ていた人が「間違っていない」と言ってくれたとしても、反省し、言い方や伝え方を考えるようにしています。

同じ言葉でも、素直に聞けたり、歪んで伝わるときがあるのは、言い方ひとつの違いだったりするんですよね。どんな仕事であっても人対人であることに変わりはないので、落ち着いてちゃんと話すことが大切だと思いますし、そういう気持ちは大事にしていきたいですね。あとは、日ごろからコミュニケーションをしっかりとること。普段からよく話して相手のことを理解しておけば、トラブルにはならないですよね。

それは、仕事に限らず家庭でもいえることだと思うので、休みの日などは積極的に子育てに参加しています。子供の遊び相手をしたり、お風呂に入れたりと、どれも普通なことですが、長女と次女の個性の違いを発見したり、父親としてのこれからの課題がみえたりもしてきました。そういった経験もいつか仕事で役立つ日が来ると思うので、これからも家族で過ごす何気ない時間を大切にしていきたいです。

PROFILE

さとうりゅうた・1980年東京都生まれ。1999年、舞台「BOYS TIME」で俳優デビュー。翌2000年に出演したドラマ「池袋ウエストゲートパーク」で主人公の相棒役に抜擢されたことで知名度を上げ、その後はドラマを中心に、映画、舞台、CMなど精力的に活動を続け、トップ俳優の仲間入りを果たす。映画『木更津キャッツアイ』『海猿』シリーズなど数々の話題作にも出演し、2008年には「ROOKIES」でドラマ初主演、2009年には「ビロクシー・ブルース」で舞台初主演を飾るなど、高い演技力が評価されている。2007年にはピクサー・アニメーション・スタジオによる長編アニメーション映画『レミーのおいしいレストラン』で、主人公リングイニの日本語吹き替えにも挑戦した。2007年、母校である日本大学藝術学部が設立した「日藝賞」の第1回受賞者に選ばれたことを皮切りに、2009年には「ベストスマイル・オブ・ザ・イヤー2009」の著名人部門で「ベストスマイル賞」、2010年「第3回ペアレンティングアワード」の「パパ部門」、2011年「第12回ベストフォーマリスト」を受賞するなど、持ち前の明るさやファッションセンスのよさなどが、各方面で讃えられる。私生活では2009年に結婚し、現在2児の父。

styling=勝見宜人 hair&make=土橋大輔


「HEAT」

不動産会社のエリートビジネスマンが、消防団員として「街を救うヒーロー」へと成長していく姿を描く。総務省消防庁および東京消防庁の全面協力のもと、ドラマ史上初めて消防団が舞台となる。
主人公の池上タツヤ(AKIRA)は、日比野仁(稲垣吾郎)が社長を務める不動産会社で都市開発を手掛けるエリートビジネスマン。数百億円規模の都市開発計画の候補地として目をつけた街で、用地買収のための情報を得ようと素性を隠して消防団に入団するタツヤだが、そこでは火災現場での地味な活動や生業の合間をぬって行われる訓練など、成果主義で成り上がってきたタツヤには理解できないことばかりが待ち受けていた。しかし、安住咲良(栗山千明)をはじめとする個性豊かな消防団員や消防士の合田篤志(佐藤隆太)と時にぶつかり、時に協力していく中で、「自分の利益が第一」というタツヤの信念が少しずつ揺らぎ始める。

関西テレビ・フジテレビ系 7月7日スタート 毎週火曜 夜10:00〜10:54(初回は夜9:00〜10:48の2時間スペシャル)