Adecco Special Interview 水川 あさみ 自分の仕事を“好き”でいると、チームワークが強くなる

2015.12.25

演技は、誰も塗っていない白紙の役に自分が色づけしていくこと

これまでさまざまな役柄を演じさせていただきましたが、どんな役を演じる場合でも大切にしているのは、脚本を読んだときの直感です。よく、インタビューで「役との共通点」を聞かれますが、私の場合、演じるにあたって役と自分が似ているかどうかはあまり重要ではなくて、直感的にその役柄に「共感できるかどうか」が大切なんです。そこで感じた気持ちが役柄となじむきっかけになると思うので、脚本から得たイメージや、演技の中で生まれてくる感情を大事にするようにしています。私とは違うその人なりの思いを理解して、すり合わせていく感じですね。

お芝居は、果てしなく自分と向き合う作業でもあるので、体力的な面でも精神的な面でも、しんどいと思うことは多々あります。でも、まだ誰も塗っていない白紙の役に自分が色づけしていくという感覚はこの仕事ならではだし、その役を与えていただけた私にしかできないことだと思い取り組んでいます。

いつでも「経験を通して成長した自分の姿」を思い描く

舞台は生身の体ですべてを表現しなければならないので、演じることの難しさを痛感します。映像と同じアプローチで演技をしても伝わらないんです。特に稽古中は、自分がいくつも用意してきた表現方法がひとつも通用しないとか、演出家に言われた表現ができないとか、たくさん恥をかきます。“恥をかきに行く場所”と割り切るようにしても、自分の引き出しのなさに唖然としたり、追いつけない悔しさやもどかしさを感じることもあります。

それでも乗り越えられるのは、「千秋楽を迎えたときには、1mmでも成長している自分がいる」と想像しているから。関わっている人たち全員が同じ方向を見ていないと、よい作品はできないので、簡単に投げ出せないという責任感も大きかったですね。舞台という、映像では経験できない体験や表現から得たものが、役者としての幅を広げる糧になっていると感じています。

小手先では通用しない、だから楽しい

2016年1月から始まるドラマ「わたしを離さないで」の酒井美和役を演じることを、今はすごく楽しんでいます。ある目的のために特別な環境下で育てられた男女3人が、愛する意味や生きる意味という目に見えないものと向き合いながら、もがいたり模索したりして、自分たちに与えられた使命を受け入れていくストーリーなのですが、私の演じる美和はすごく欲求の激しい女性です。欲しいものは欲しい、嫌なものは嫌。周りからは、逆らうと面倒な“絶対的な存在”と思われているような人。美和が持って生まれた性格は、自分の欲求に素直であり、かつ主張が強い中にももろさを潜めています。

そのような性格の美和を演じるわけですが、彼女なりの絶対の正義がそこにあるというところが、演じる上ですごく難しくもあり、楽しいと思います。私自身と似ているところはあまり感じられないし、欲求的な感情は理解できるけれど、タイプは違います。小手先では通用しないと思うからこそ、演技の中で生まれる感情を大事にしながら、全力で演じる楽しさがありますね。

みんなが「今日も頑張ろう」と思ってくれるようなモチベーションをつくる

この「わたしを離さないで」はもともとイギリスが舞台の原作があって、映画化もされています。だから、脚本を読む前までは、日本人の私たちが演じるというところに不安がありました。原作のある作品だということは、出演者はもちろん携わっているスタッフ全員の共通意識の中にあって、作り手がチームとなってひとつの作品をつくり上げるために、コミュニケーションが特に大切な作品だと感じました。

コミュニケーションはどこの現場でも大切で、意識するように心がけています。スタッフの方がいてはじめて、私たち役者の仕事が成立するわけですから、お互いに声を掛け合いモチベーション上げていくとか、それぞれの立場で自分なりの楽しみ方を見つけられるようになれば、より楽しく仕事ができると思うんです。いろいろな人と関わることが多いからこそ、コミュニケーションと、楽しみを探すことは大事にしていきたいですね。

仕事を好きでいることはチームワークをも強くする

作品のたびに現場やメンバーが変わるこの仕事は、それだけいろいろな人や物事に携われるから、自分の人生がすごく豊かになると感じています。だから、その一つひとつの場所を、その都度ちゃんと“好きになる”ことがすごく大事だと思っています。

私に限らず、誰でも自分の仕事が好きであれば、どうしたらよりよくなるかとか、その仕事について常に考えながら自分の役割をこなしていけますよね。辛いことがあって辞めたくなっても、根本的に“好き”であれば逃げ出すことはないって、心のどこかでわかっていたり。それがチームでやる仕事だったら、そんな風に思っている人たちが集まることで、一人ひとりの“好き”な気持ちから結束力も自然と生まれ、その一体感からチームワークが強くなるんじゃないかなって。だから、そのためにも、まずは自分の信念として「仕事を好きでいること」が大切だと思っています。

styling=梶雄太 hair&make=加藤恵

PROFILE

みずかわあさみ・1983年大阪府出身。1997年、映画『劇場版 金田一少年の事件簿 上海魚人伝説』で女優デビューを果たす。その後、さまざまなドラマや映画に出演。2011年にNHK大河ドラマ「江〜姫たちの戦国」では主人公の次姉・初役を演じた。2013年に連続ドラマ「シェアハウスの恋人」でゴールデンタイム初主演を務めた。2016年1月15日よりスタートする連続テレビドラマ「わたしを離さないで」(TBS系列)では、勝ち気で他人を支配下に置きたがるものの、誰よりも強く愛を求める酒井美和役を務める。また、近日放送予定作として、松本清張ドラマスペシャル「地方紙を買う女〜作家・杉本隆治の推理」(テレビ朝日系列)、映画『後妻業の女』が8月27日に公開する。


「わたしを離さないで」

世界的権威のある文学賞・ブッカー賞を受賞した日系英国人作家カズオ・イシグロが2005年に発表し、英国で100万部を超えるベストセラーとなった同作を、世界で初めてドラマ化。「天皇の料理番」や「JIN―仁―」など良質な作品を生み出してきた森下佳子が脚本を担当する。舞台をイギリスから日本に移し、生きること、愛することに真摯(しんし)に向き合う男女3人の葛藤を、透明感あふれる世界観で描く。
世間から隔離された施設・陽光学苑で、良質な教育を受けて育った保科恭子(綾瀬はるか)、土井友彦(三浦春馬)、酒井美和(水川あさみ)の3人は、ある日、生まれながらにある使命を与えられた「特別な子供」であると教えられる。運命を知った3人は「生きる意味」を模索し、絆を求め、人を愛することで希望を得ようとする。生と愛が絡み合い、観る者に衝撃を与えるヒューマンサスペンス。

TBS系列 2016年1月15日より毎週金曜 夜10:00〜10:54(初回15分拡大)