Adecco Special Interview 栗山 千明 失敗を恐れず、新しい環境に飛び込む勇気を。

2015.4.30

逆境こそ学びのチャンス。自ら飛び込んだ環境が与えてくれたもの

5歳からモデルをしていて、始めは「お仕事」というより、「楽しい!」という感覚のほうが強い中で続けていました。仕事としての意識が芽生えたのは、上京した中学3年生の終わり頃ですね。ただ、やはり若さゆえの実直さで取り組んだ仕事も多かったように思います。

そんな中、仕事に対する意識に大きな影響を与えたのが、2003年に公開された映画『Kill Bill:Vol.1』の撮影です。ロサンゼルスと北京にアパートを借りて、4カ月間、ひとりで滞在しました。映画の中には日本を舞台にしたシーンもあり、監督のクエンティン・タランティーノも日本が好きな方で、ウェルカムな空気だったのはよかったのですが、言葉は通じないし、日本の撮影とスタイルも違う。現地の通訳さんもずっとそばにいてくれるわけではないので、不安になることも多く、実家とのつながりを唯一感じられる携帯電話をお守りのように握りしめていたことを覚えています。

それでも、現場に入ったらやらなければいけない。ジェスチャーや片言の英語でコミュニケーションもままならない中、「やるしかない!」と自分を奮い立たせていました。今なら考え過ぎて恐怖が先に立ち、二の足を踏んでいたかもしれません。でも、その経験によって文化や考え方の違いを肌で感じるこができたから、仕事に対する視野は広がりました。新境地に自ら飛び込んだことで自信もつきましたし、自分の正しいと思っていることを物事の基準にしちゃいけないと思うようにもなりました。「同じ撮影でもいろいろな形があって、いろいろな考え方の人がいる。自分がその環境に慣れていないから戸惑うだけで、もしかしたらそのやり方のほうが効率よく進むのかもしれない」とか、物事を違う角度から見られるようになったんです。

行動しなければならない日は必ずやって来るので、考えすぎて怖気づくより、その環境に飛び込んでしまったほうがたくさん学べるということを、身をもって実感できた現場でしたね。

直感を信じて挑戦する

そこで学んだ思いは今にも活かされていて、どんな役柄でも、あれこれ考える前にまずは感じた通り演じてみるようにしています。クランクインまでの期間が長くて考える時間が多いと、脚本に対する自分の解釈は合っているのか、私に求められているものはこれでいいのかなど、ずっと一人で考えて不安になってしまうんです。もちろん、撮影前は作品に関連する物事を勉強したり、原作を読んだりといった環境作りをしていますが、気持ちの上では直感を信じ、砕けない程度の体当たりで挑むことを意識しています。

そうはいっても、自分の演技に納得がいかず、撮影後に気分が落ち込むことはよくあります。でも、作品の全体を観ている監督が「OK」を出したということは、それでよかったということ。自分と周りとの観点の違いを意識することでモチベーションを戻して、次の撮影に向けて気持ちの切り替えをしています。反省することは大切ですが、いつまでも失敗や後悔を引きずるのではなく、「周囲の言葉を受け入れて、完璧ではない自分を認める」という、“いい割り切り”をもって臨むことも、向上していく上で必要なことなのではないかと思います。

心地いい環境づくりに欠かせないのは、相手の立場を考える気持ち

また、現場では話しやすい雰囲気になるよう、共演者やスタッフへ私から積極的に関わっていくようにしています。それぞれに担当や立場があり、考え方も違いますが、もの作りをしているスタンスや、いい作品に仕上げたいという方向性は同じ。フランクな環境であれば、日常の会話のような流れで意見交換もしやすいと思うからです。

そうはいっても、この仕事は作品が変わるたびにスタッフや共演者も変わるので、現場ごとで雰囲気は違います。緊張感を大切にされる俳優さんもいらっしゃるので、まずは相手にとってどんな環境が過ごしやすいかを考えて、行動に移すようにしています。ほどよい距離感と飾らない空気で、お互いに居心地のいい関係性を築いていくことは、どのような場面でも必要なことではないでしょうか。

ただ最近は、共演者の中に面識のある方がいらっしゃる機会も多いので、始めから和やかな雰囲気の現場も増えています。5月30日に『種まく旅人 くにうみの郷』という映画が公開されるのですが、共演者の桐谷健太さんや三浦貴大さん、谷村美月さんも、一緒にお仕事をしたことがある方たちなので、リラックスして撮影に臨めました。

新境地では、その場の流れに身を任せる勇気も大切

逆に、この『種まく旅人 くにうみの郷』の撮影では、初めての経験をたくさんできて、驚きと発見の連続でした。淡路島を舞台に、海苔(のり)の養殖とタマネギ栽培、“かいぼり”というため池の維持作業の関係性などを題材にしたヒューマンドラマなのですが、漁やかいぼりについて事前に調べたときは難しく感じて、戸惑うことも多かったんです。でも、地元の漁師さんに協力していただいて早朝から一緒に漁に出たり、実際にかいぼりを行ったり、現地の方に教えていただいた一つ一つの経験から、下調べだけでは分からなかったことをたくさん感じることができました。

人間って不思議なもので、どんなに違う環境でも適応できる能力が備わっているんですよ。だから、始めるまでは不安や戸惑いを感じていたことでも、やってみると意外にすんなり乗り越えられたりする。でもそのためには、与えられた環境にいい意味で流される潔さが必要なんだと、改めて思いました。『Kill Bill:Vol.1』の撮影と通ずるものを感じましたね。

完璧ではない自分自身を認めることが、向上への第一歩

同じ仕事を長年続けている私でも、新しい環境に出くわすと不安を感じることはあります。初めてなら、緊張や不安でいっぱいなのは当たり前。最初からできる人なんていないから、新生活を迎える皆さんには、失敗を恐れずに新しい環境へ飛び込んでほしいと思います。失敗しても、下手でも、大切なのは一所懸命に取り組むこと。同じ失敗を繰り返さなければいいのだから、怒られることやできないことを怖がらないでほしいです。

私はいま、経験を重ねている分だけ、期待されることへのプレッシャーもあります。でも、失敗を恐れて挑戦を諦めてしまったら、そこから成長することはできません。仕事でもプライベートでも、いつまでも求められる人でいたいし、また一緒に過ごしたいと思ってもらいたいから、これからも向上する努力はしていきたいと思っています。上手くいかずにへこむこともあるけれど、その完璧ではない自分自身を認めることが、向上への第一歩。そして、その積み重ねが、自分にとって居心地のいい環境を作り出してくれるんだと信じています。

PROFILE

くりやまちあき・1984年生まれ。ティーン向けファッション誌でのモデル活動を経て、1999年に映画『死国』から女優としての活動を開始。2000年、映画『バトルロワイアル』での演技がクエンティン・タランティーノ監督の目に留まり、2003年に公開された『Kill Bill:Vol.1』でハリウッドデビューを果たす。ユマ・サーマンとの戦闘シーンが「The MTV Awards 2004」でBest Fight賞を受賞し注目を集め、一躍トップ女優の仲間入りを果たした。その後も映画やドラマなど女優として活躍し、2006年「第3回The Beauty Week Awards 2006」で女優のロングヘア部門賞、2007年第7回ベストレザーニスト賞、同年「第7回ベストドレッサー賞」でスポーツ・芸能部門賞、2013年雑誌「TVnavi」の「読者が選ぶドラマ・オブ・ザ・イヤー2012」で最優秀助演女優賞、2014年「アジア・フィルム・アワード(AFA)特別セレモニー」でアジア・ライジング・スター賞など、数多くの賞を受賞した。現在放送中のドラマ「アルジャーノンに花束を」(TBS系列)でヒロイン望月遥香役、5月30日公開の映画『種まく旅人 くにうみの郷』では主演・神野恵子役を務める。

衣装協力:Demikitte/yasu planning co., Ltd(03-5791-9337)


『種まく旅人 くにうみの郷』

瀬戸内海に囲まれた淡路島の大自然を舞台に、人と自然の再生の物語。『真夏のオリオン』『小川の辺』など繊細な人物描写に定評のある篠原哲雄が監督を務める。“若き官僚”に栗山千明、“山の男”に桐谷健太、“海の男”に三浦貴大と若手実力派の俳優たちを迎えて、淡路島オールロケで人生の恵みを描く感動のヒューマンドラマ。
環境調査員として淡路島への赴任を命じられた農林水産省官僚の神野恵子(栗山千明)は、家業のタマネギ畑を継いだ豊島岳志(桐谷健太)や、家を出て海苔の養殖業に転身した岳志の弟・渉(三浦貴大)らと出会い、島の豊かな特産物に興味を抱くようになる。リサーチを進める中で、父親の死をきっかけに生じた兄弟の確執、水質の変化による海苔の色落ちなど、島の抱える問題に直面した恵子。かつて島で行われていた伝統作業「かいぼり」の存在を知り、漁師の息子で淡路島市役所のベテラン職員・津守(豊原功補)らの協力を仰ぎながら、かいぼりの復活という一大プロジェクトを立ち上げる。

配給:松竹
5月30日(土)より、全国ロードショー
© 2015「種まく旅人 くにうみの郷」製作委員会