Adecco Special Interview 小泉 孝太郎 いい出会いが夢の実現につながり、いい人間関係が働きやすい環境をつくる

2015.8.27

“自分自身になれる仕事”と考え、一か八かで飛び込んだ世界

体を動かす仕事が好きでとび職のアルバイトをしていた時期もあるのですが、子供のころから漠然と、スクリーンの向こう側やドラマの中の世界が気になっていました。「なんだろう、あの世界は?」って。そんな興味が頭の片隅にあったのと、父親がかねてから「仕事は、自分がやりたいこと、興味があることをやりなさい」と言っていたこともあって、この先どんな仕事をしていこうかと考える時に、“役者”も選択肢の一つに入れました。

僕の父親である小泉純一郎という存在は特殊なので、どこに行っても“父親”がつきまとうんですよね。もちろん、これからも一生ついて回ることなのですが、当時は「自分の一生の課題は“小泉純一郎の息子”ではなく、“小泉孝太郎”になること」という思いが強くありました。だから、自分の仕事を決めるいくつかの選択肢の中で、「小泉孝太郎になる仕事」かどうかを考えたとき、“役者”という仕事は、親の力も関係ないし、上手くいけばその世界で小泉孝太郎になれるのではないかと思ったんです。一か八かですが、挑戦してみようかなと。

いかりや長介さんとの出会いが夢を叶えるターニングポイント

この世界に入ってすぐの頃、事務所の先輩のいかりや長介さんに、「君はいい世界を選んだよ」と言ってもらったことがあるんです。「25歳、30歳、40歳と、年を重ねていく間の生き様が表れる仕事だから楽しいよ」って。それからは会うたびに、「焦るな、焦るな」「大丈夫だよ」ってずっと言ってくれました。一生かけてやり抜くと決めた仕事なので、早く結果を出したいと焦っていた時期もありました。そんなとき、その言葉がすごく心の救いになったので、いかりや長介さんと出会えたことは僕にとってとてつもなく大きなことでしたね。

若い時って、誰でも自分なりの夢があると思うのですが、それを叶える過程で誰と出会うかは、本当に大事なことだと思います。もし、僕が違う形で違う誰かと出会っていたら、そして違う経緯でこの世界に入っていたら、今の自分はなかったかもしれない。あの時、あのタイミングでいかりや長介さんに出会えたからこそ、地道にやり続けることの大切さを教えてもらえて、焦らずにここまで来られたのだと思います。

仕事とは、自分と向き合い、耐えて、やり続けること

もう一つ同じように支えになったのは、10年ほど前に父から言われた、「たとえ5年、10年、仕事がなくても、役者という仕事をやり続けなさい。頑張っていれば、必ず自分を見てくれている人がいるから」という言葉です。結果はすぐに出るものではないからやり続けるしかないんだなと思えて、気持ちがラクになった瞬間でした。それからは、どんなに辛いことに直面しても、その時々の苦しさとか自分のふがいなさだったりとか、ダメな時の自分と向き合っていけるようになりましたね。そうすると、ちょっとしたきっかけでも「この間より上手くできたな」って思える瞬間が必ず見えてくるので、それを繰り返していく。その積み重ねが、仕事の成果につながっていくと実感しています。

仕事は、テクニックや工夫だけで乗り越えられるようなものではないと思うので、とにかく耐えてやり続けることだと思います。苦しいですけど、そうやって自分と向き合っていくことで、50歳くらいになったときに、一人の役者として周りが認めてくれるようになるのかなって。これまで辛さや苦しさを乗り越えてくることができたのは、その思いだけですね。

働きやすい環境に必要なのは“人間力”

仕事をしていく上では、自分と向き合うのと同じくらい、周りの人と向き合うことも大切だと思います。僕はそれをポリシーにしているのですが、今、放送中のドラマ「エイジハラスメント」で演じている保科晶彦という男は、違う方向に突き抜けています。「俺は一生結婚しないぞ。キレイな若い女と楽しい時間を過ごしていければそれで幸せだ! 縛られたくない!」っていう(笑)。僕のポリシーとはかけ離れていますが、そこまで突き抜けてしまえば、それはそれで、その人らしい一つの形として、うらやましくもありますね。だからあまり型にはめず、自由に演じることを心がけています。

このドラマはいろいろなハラスメントを題材にしていますが、武井咲さん演じる吉井英美里をはじめとした一人ひとりの登場人物の人間性が細かく描かれていて、結局は「この窮屈な世の中を生き抜くためには、自分の人間力を磨きなさい」って言っているような気がしています。

仕事って自分の思いだけではできないので、自分に思うところがあっても、相手は何のことかすら分かってくれないようなことは毎日のようにありますよね。そんなすれ違いがやがてハラスメントを生む。だけど、それぞれが人間力を磨いていけば、理解し合える部分が増えて、働きやすい環境に改善していくことができるんじゃないかと思います。

いい付き合いが前向きになれる秘訣

働きやすい環境とともに、一人ひとりが前向きに仕事に取り組む姿勢も大切ですよね。でも、そこには仕事の内容だけではなく、自分を取り巻く人間関係も大きく影響していると思います。恋愛も結婚も友達も、誰と付き合うかの決定権はみんな自分にありますよね。いい付き合いができていて人間関係が上手くいっている人は、私生活が充実していたり心の支えができていたりするから、仕事にも前向きになれる。いい付き合いをすることがものすごく大切なんだと思います。特に若い人なら、それが100%を占めるといっても過言じゃないくらい。

ただ、“いい人”といっても、自分を高めてくれる人だとか、必ずしもメリットがなければいけないわけではなくて、「自分がこの人と付き合いたい」と思える相手のそばに身を置くことが、仕事もプライべートにも意欲を持って取り組め、前向きに生きられる秘訣なんじゃないかな、と思います。

PROFILE

こいずみこうたろう・1978年神奈川県横須賀市生まれ。2001年、サントリー「ダイエット生」のCMに出演の後、翌2002年にテレビドラマ「初体験」で俳優デビュー。端正な顔立ちと爽やかな演技が話題となって、一躍人気俳優の仲間入りを果たす。以降、ラブコメディからサスペンス、時代劇に至るまで幅広いジャンルをこなし、数々のテレビドラマや映画に出演。故・石原裕次郎のデビュー作である「狂った果実」のリメイクドラマ「狂った果実2002」を筆頭に、2006年の「松本清張ドラマスペシャル・波の塔」、2009年の「コールセンターの恋人」、2013年の「杉村三郎シリーズ」などで主演を務めた。2014年にはウォルト・ディズニー長編アニメ映画『ベイマックス』で吹き替えにも挑戦。父親は第87〜89代内閣総理大臣を務めた小泉純一郎氏。


「エイジハラスメント」

日本の企業にはびこるさまざまな「年齢差別=エイジハラスメント」の現状を、若くて美しい女性新入社員が、もがき苦しみながらも猛然と立ち向かう姿を通して描く。日本を代表する人気脚本家・内舘牧子が10年ぶりに手掛けた連続ドラマとしても話題。
「役員を目指す」という高い志を持って総合商社に入社した吉井英美里(武井咲)だが、希望していた部署ではなく、旧態依然とした総務部に配属されてしまう。意欲・能力・向上心にあふれ、若さと美貌を兼ね備えた英美里は、そのすべてがハラスメントの対象に。女性には若さと美しさしか求めない企業体質、チヤホヤする男性社員、年上女性から受ける理不尽な嫉妬…。そんな、あらゆるハラスメント地獄に耐え忍ぶ英美里だったが、やがて反旗を翻し、陰湿ないじめを打ち砕いて「総務の女王」と噂されるほどに変化していく。

テレビ朝日系 毎週木曜 夜9:00〜9:54